カテゴリー「裁判例」の9件の記事

2009年6月 2日 (火)

知的財産裁判例集(その3)

こんばんは。弁理士の藤野です。本ブログを開始したのは昨年の6月2日ですので、本日で、ブログ開始後丸一年が経過したことになります。この一年間、弊所の営業日(土日祝日、年末年始以外)については、曲がりなりにも毎日更新することができました。これで、一応、当初考えていた目標は達成されたことになります。

さて、本題ですが、今日も、裁判所のWebサイトに掲載されている知的財産裁判例集についてのご紹介の続きです。

以前に述べましたように、知的財産裁判例集用の検索条件指定画面において、検索条件を適宜指定して、画面右上又は右下に表示されている「検索」ボタンをクリックすると、検索結果一覧表示画面が表示されます。

検索結果一覧画面においては、指定した検索条件にマッチする裁判例の一覧が表示されます。具体的には、左側の列に、この場合の裁判例集名である「知的財産裁判例集」という文字列が表示され、真ん中の列に、事件番号、事件名、裁判年月日、裁判所名等が表示され、右側の列に、「全文」という文字列が表示されます。この「全文」の部分をクリックすると、該当する判決全文(pdfファイル)を閲覧することができます。

一方、左側の列に表示された「知的財産裁判例集」の部分をクリックすると、該当する裁判例についての検索結果詳細画面が表示されます。当該検索結果詳細画面においては、事件番号、事件名、裁判年月日、裁判所名、権利種別及び訴訟類型が表示されると共に、判決全文pdfファイルへのリンクが表示されます。

なお、現在の判例検索システムでは、わざわざ検索結果詳細画面を表示させなくても、検索結果一覧画面において、実質的に同じ情報を参照することができます。以前は、検索結果一覧画面に表示される情報が、現在のものより少なく、判決全文を閲覧するためのpdfファイルへのリンクも表示されていませんでした。そのため、以前は、全文を閲覧するためには、検索結果詳細画面を表示させることが必須でした。

前述しましたように、現在は、検索結果一覧画面において、判決全文pdfファイルへのリンクが表示されますので、判決全文pdfファイルを閲覧するために、検索結果詳細画面を表示させる必要はありません。但し、判決「全文」pdfファイルとは別に、添付資料として「別紙」pdfファイルが存在する場合があり、その「別紙」pdfファイルを閲覧するためには、現在でも、検索結果詳細画面を表示されることが必要となります。「別紙」pdfファイルへのリンクは、検索結果詳細画面にしか表示されておりません。

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2009年6月 1日 (月)

知的財産裁判例集(その2)

こんにちは。弁理士の藤野です。先程、少し遅い昼食に出かけようとしたら、いきなり大雨が降ってきて、出るタイミングを逸してしまいました(汗)。

さて、今日は、前々回に続いて、裁判所のWebサイトに掲載されている知的財産裁判例集についてご紹介します。

前々回述べましたように、知的財産裁判例集用の検索条件指定画面には、「特定検索」用の検索条件を指定する部分と、「詳細検索」用の検索条件を指定する部分とがあります。このうち、「特定検索」用の検索条件を指定する部分については、前々回説明しましたので、今回は、「詳細検索」用の検索条件を指定する部分について説明します。

「詳細検索」用の検索条件を指定するものとしては、まず、裁判年月日についての検索条件として、期日を指定するか期間を指定するかを選択するための「期日指定」ラジオボタン及び「期間指定」ラジオボタンと、期日又は期間の始期について、年号を指定するためのリストボックス並びに年、月及び日をそれぞれ入力するための3つのテキストボックスと、期間の終期について、年号を指定するためのリストボックス並びに年、月及び日をそれぞれ入力するための3つのテキストボックスとが表示されます。なお、「期間指定」する場合は、期間の始期及び終期のいずれか一方のみを指定することもできます。例えば、「期間指定」ラジオボタンをクリックして、左側のリストボックス及び3つのテキストボックスにおいて、「平成」「21」年「1」月「1」日を指定した場合、平成21年1月1日以降、すなわち、今年の裁判例が検索対象となります。

「裁判年月日」を指定する部分の下には、検索対象とする「権利種別」を指定するための7つのチェックボックスと、検索対象とする「訴訟類型」を指定するための3つのチェックボックスとが表示されます。権利種別又は訴訟類型で検索対象を絞り込みたいときは、該当する権利種別又は訴訟類型のボックスをチェックします。なお、権利種別を指定するためのチェックボックスをまったくチェックをしなければ、すべての権利種別が検索対象となり、訴訟類型を指定するためのチェックボックスをまったくチェックをしなければ、すべての権利種別が検索対象となります。

訴訟類型を指定するためのチェックボックスの下には、判決文の「全文」を対象としたテキスト検索のキーワードを入力するためのテキストボックスが9つ表示されます。9つのテキストボックスで指定された条件は、まず、横に並ぶ3つのテキストボックスで指定された条件がそれぞれORされ、縦に並ぶ3つのOR結果が、ANDされます。

上記条件、すなわち、「裁判年月日」、「権利種別」、「訴訟類型」及び「全文」については、それぞれについて条件が指定された場合、指定された各条件をANDした条件で検索されます。

また、便宜上、 前々回と今回とで、「特定検索」用の検索条件と、「詳細検索」用の検索条件とを別々に説明しましたが、両者は排他的に利用されるものではなく、「特定検索」用の検索条件と、「詳細検索」用の検索条件とを組み合わせて検索を行うことも可能です。例えば、裁判所名を入力するためのテキストボックスに「東京」と入力し、裁判所の種類を指定するためのリストボックスで「地方」を選択する一方で、「期間指定」ラジオボタンをクリックして、その下方左側のリストボックス及び3つのテキストボックスにおいて、「平成」「21」年「1」月「1」日を指定して検索を行えば、平成21年1月1日以降の東京地裁の裁判例を検索することができます。

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2009年5月28日 (木)

知的財産裁判例集

こんばんは。弁理士の藤野です。前回で、昨年8月から続けてきた『特許電子図書館の簡単な使い方』のご紹介が終わってしまったので、これからは、ネタ探しに苦労しそうです(汗)。

さて、今日は、裁判所のWebサイトに掲載されている知的財産裁判例集についてご紹介します。

知的財産裁判例集は、知的財産権に関する民事事件及び行政事件のうち、最高裁判所民事判例集に登載された裁判例と、昭和44年以降の主な裁判例が掲載されたものであり、判例検索システムを利用して、所望の検索条件に合致する裁判例を検索して閲覧することができます。すべての裁判例が掲載されている訳ではありませんが、最近の裁判例についてはかなりの確率で掲載されているのではないかと思います。

裁判所のWebサイトのトップページにおいて、画面右上に表示された「裁判例情報」の部分をクリックすると、判例検索システムの検索条件指定画面に移動することができます。判例検索システムの検索条件指定画面として最初に表示される画面は、知的財産裁判例集を含む6種類の裁判例集を横断的に検索するための検索条件指定画面となりますが、オレンジ色のタブの一番右側にある「知的財産裁判例集」タブをクリックすると、知的財産裁判例集用の検索条件指定画面に切り替わります。

知的財産裁判例集用の検索条件指定画面には、「特定検索」用の検索条件を指定する部分と、「詳細検索」用の検索条件を指定する部分とがあります。

今日は、まず、「特定検索」用の検索条件について説明します。

「特定検索」用の検索条件を指定するものとしては、まず、裁判所名を入力するためのテキストボックスと、裁判所の種類を指定するためのリストボックスと、裁判所の支部名を入力するためのテキストボックスが表示されます。更に、事件番号の年号部分を指定するためのリストボックスと、事件番号の年部分を入力するためのテキストボックスと、事件番号の符号部分を指定するためのリストボックスと、事件番号の番号部分を入力するためのテキストボックスが表示されます。

上記条件については、そのすべてを指定して特定のひとつの裁判例を検索することもできますが、必ずしもすべてを指定する必要はなく、その一部のみを指定した検索も可能です。例えば、裁判所名を入力するためのテキストボックスに「東京」と入力し、裁判所の種類を指定するためのリストボックスで「地方」を選択して検索を行えば、東京地方裁判所のすべての裁判例を検索することができます。また、事件番号の年号部分を指定するためのリストボックスで、「平成」を指定し、事件番号の年部分を入力するためのテキストボックスに「20」を入力して検索を行えば、事件番号に、「平成20」が含まれる裁判例を検索することができます。なお、「裁判所名」と「事件番号」の両方の検索条件を指定した場合は、両者をANDした検索条件で検索が行われます。

知的財産裁判例集用の検索条件指定画面において、「特定検索」用の検索条件を適宜指定して、画面右上又は右下に表示されている「検索」ボタンをクリックすると、検索結果一覧表示画面が表示されます。当該検索結果一覧画面において、右端に表示された「全文」の部分をクリックすると、該当する判決全文を閲覧することができます。なお、検索結果が2000件を超える場合は、検索結果の一覧は表示されませんので、更なる条件を追加して、検索結果を絞り込む必要があります。

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2009年3月23日 (月)

秘密保持命令に関する最高裁決定

こんばんわ。弁理士の藤野です。

さて、今日は、少し前に言い渡しがされた最高裁決定(平成21年1月27日 最高裁第三小法廷 平成20(許)36;pdfファイル)についてご紹介します。

特許法第105条の4は、秘密保持命令について規定しており、同条第1項には、裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において、その当事者が保有する営業秘密について、所定の事由に該当することにつき疎明があつた場合には、当事者等、訴訟代理人又は補佐人に対し、当該営業秘密を当該訴訟の追行の目的以外の目的で使用し、又は当該秘密保持命令を受けた者以外の者に開示してはならない旨を命ずることができると規定されております。

本件は、特許権の侵害差止め等を求める仮処分命令申立事件においても、特許法105条の4第1項に基づく秘密保持命令の申立てが許されるか否かが争われてた事案です。

原審では、

特許法105条の4第1項柱書き本文に規定する「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟」には,特許権の侵害差止めを求める仮処分事件は含まれないから,本件仮処分事件において秘密保持命令の申立てをすることはできない旨判示して,本件申立てを却下すべきもの

とされました。

これに対して最高裁は、

秘密保持命令の制度の趣旨に照らせば,特許権又は専用実施権の侵害差止めを求める仮処分事件は,特許法105条の4第1項柱書き本文に規定する「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟」に該当し,上記仮処分事件においても,秘密保持命令の申立てをすることが許されると解するのが相当である。

として、原決定を破棄し、原々決定を取り消した上で、本件を原々審に差し戻しました。

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2008年12月 5日 (金)

実演家の権利(録音権、譲渡権)に関する裁判例

こんにちは。弁理士の藤野です。今日は、やたらと風が強いですね。

さて、今日は、少し前に言い渡しがされた実演家の権利(録音権、譲渡権)に関する裁判例(平成20年10月22日 東京地裁 平成19(ワ)9613;pdf)についてご紹介します。

著作権法では、著作物を創作した著作者(例えば、作詞家や作曲家)のみならず、著作物を演奏等する実演家(例えば、演奏家や歌手)についても、著作隣接権者として、保護対象としており、実演家に、著作隣接権として、録音権や譲渡権等の権利を付与しております。

今回ご紹介する裁判例は、この実演家の権利としての録音権及び譲渡権が問題となった事案です。

具体的には、2つのレコード(本件レコード)に固定された演奏を行った原告ら(あるバンドのメンバー4人)が,本件レコードを製造,販売している被告(X社)に対して,被告の同行為は,原告らが本件レコードについて有する実演家の権利としての録音権,譲渡権(著作権法91条1項,同法95条の2第1項)を侵害するとして,これらの権利に基づき,本件レコードの製造,販売の差止めを求めた事案です。

なお、著作権法上、レコードとは、『蓄音機用音盤、録音テープその他の物に音を固定したもの(音をもつぱら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)をいう』と定義されており、本来のレコードのみならず、カセットテープやCD等も含む概念になっています。

被告X社は、原告らの請求に対して、

原告らは,原告らが共同で作詞作曲した本件レコードの楽曲(本件楽曲)の著作権をY社に譲渡し,その後,被告は,Y社と,本件楽曲について,共同出版契約を締結し,本件楽曲の編曲,演奏,収録,原盤製作について,Y社から授権,承諾を得た。これを前提として,被告は,原告らに本件楽曲の演奏を依頼し,同依頼に基づき,原告らは,本件楽曲の演奏をした。
このように,本件レコードに固定された演奏は,本件楽曲についての著作権を有するY社及びY社から本件楽曲についての原盤製作の授権を得た被告のために行われたのである。

という事実関係を明らかにした上で、

単なる演奏家は,当該楽曲の著作権者の意向に反して,演奏契約上の顕著な違反又は人格権の侵害がない限り,著作隣接権の行使として,演奏を固定したレコードの製造の差止めを求めることはできない。そして,原告らも,被告に対し,被告の意向に反して行使できる実演家の著作隣接権を有していない。

などと反論しました。

このような被告X社の主張に対して、裁判所は、

著作隣接権と著作権とは別個独立の権利であり,レコードに固定された演奏についての実演家の著作隣接権の行使が,当該レコードの楽曲についての著作権により制約を受けることはないのであるから,実演家は,当該楽曲の著作権者等から演奏の依頼を受けて演奏をした場合であっても,当該楽曲の著作権等に対して,当該演奏が固定されたレコードの製造,販売等の差止めを求めることができることは明らかであり,被告の上記主張は失当である。

として、原告らの請求を認容しております。

本件のような場合、通常であれば、なんらかの契約によって、原告らの実演家としての著作隣接権は、被告に譲渡されているはずですが、本件ではそのような契約がされていなかったということでしょうか。いずれにしても、著作隣接権と著作権とは別個独立の権利であるということは、留意しておく必要があります。

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2008年9月29日 (月)

結合商標の類比判断に関する最高裁判決

こんにちは。弁理士の藤野です。

さて、今日は、前回の記事で紹介するつもりが準備が間に合わなかった(汗)、結合商標の類比判断に関する最高裁判決(平成20年9月8日 最高裁判所第二小法廷 平成19(行ヒ)223;pdfファイル)についてご紹介します。

本件は、まず、Aさん(上告人)の登録商標(商標登録第4798358号。以下、本件商標という)に対して、Bさん(被上告人)が無効審判を請求したことに話が始まります。無効審判の段階では、Bさんによって様々な無効理由が主張されましたが、そのうちのひとつに、本件商標は、Bさんの登録商標(商標登録第2354191号(引用商標1)及び第2365147号(引用商標2))に類似するので、商標法4条1項11号に該当するというものがありました。

本件商標は、「つつみのおひなっこや」の文字を標準文字で横書きして成り、指定商品を「土人形および陶器製の人形」とするものです。一方、引用商標1は、「つゝみ」の太文字を横書きして成り、指定商品を「土人形」とするものであり、引用商標2は、「堤」の太文字1字から成り、指定商品を同じく「土人形」とするものです。

無効審判の結論としては、いずれの無効理由にも該当しないということで、請求不成立ということなりました。つまり、本件商標は有効とされました。その結論に納得のいかないBさんは、Bさんの請求を不成立とした審決の取り消しを求めて、知財高裁に訴えを提起しました。

これに対して、知財高裁は、商標法4条1項11号該当性を否定した上記審決は誤りであると判断して、上記審決を取り消しました(平成19年04月10日知財高裁 平成18(行ケ)10532;pdfファイル)。すなわち、知財高裁では、本件商標と、引用商標1及び2(引用各商標)とは類似すると判断しました。

その理由として、知財高裁は、主として、観念及び称呼が類似していることを挙げております。すなわち、観念については、

本件商標の構成のうち,冒頭の「つつみ」からは,地名,人名としての「堤」ないし「堤人形」の「堤」の観念が,「おひなっこや」からは,「雛人形屋」の観念が,それぞれ生じ,全体としては,「堤」という土地,人物の「雛人形屋」あるいは「堤人形」の「雛人形屋」との観念が生じるものと認められる。したがって,本件商標は,「つつみ」と「おひなっこや」とが組み合わされた結合商標として認識されるものであるが,本件商標の構成において「つつみ」の部分を分離することができないほど一体性があるものと認めることはできない上,全体が冗長であることから,冒頭の「つつみ」の部分のみが分離して認識され,そこから,地名,人名としての「堤」ないし「堤人形」の「堤」の観念が生じるものと認められる。他方,引用商標1「つゝみ」及び引用商標2「堤」からも,地名,人名としての「堤」ないし「堤人形」の「堤」の観念が生じるものと認められる。そうすると,両者は上記「堤」の観念が生じる点において共通するから,観念において類似するものと認められる。

とし、称呼についても、

「つつみのおひなっこや」は,「ツツミノオヒナッコヤ」の称呼を生じるが,10音(促音を含む。)という音構成が冗長であるところ,上記のとおり「つつみ」「の」「おひなっこや」と認識されるものである。そして,上記アのとおり,「おひなっこや」の部分は,「雛人形屋」,すなわち,その取り扱う商品の内容を意味するものと把握され,かつ,「つつみ」の部分のみが分離して認識されるから,簡易迅速を尊ぶ商取引の実際においては,冒頭の「つつみ」の部分から,「ツツミ」のみの称呼をも生じるものと認められる。他方,引用商標1「つゝみ」及び引用商標2「堤」からは,いずれも「ツツミ」の称呼を生じることが明らかである。そうすると,本件商標と引用商標1,2とは,称呼において類似するものと認められる。

としております。

このような知財高裁の判決に対して、今度は、Aさんから不服が申し立てられました(上告受理の申立て)。

これに対して、最高裁は、知財高裁の上記判断は是認することができないとして、原判決を破棄し、本件を知財高裁に差し戻しました。すなわち、最高裁では、本件商標と、引用各商標とは類似しない(非類似)と判断しました。

上記判断をするにあたって、最高裁は、まず、商標法4条1項11号における商標の類比判断の一般論として、

法4条1項11号に係る商標の類否は,同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が,その外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して,その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ全体的に考察すべきものであり(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照),複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されないというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁,最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁参照)。

と述べた上で、本件については、まず、本件商標の構成に関して、

本件商標の構成中には,称呼については引用各商標と同じである「つつみ」という文字部分が含まれているが,本件商標は,「つつみのおひなっこや」の文字を標準文字で横書きして成るものであり,各文字の大きさ及び書体は同一であって,その全体が等間隔に1行でまとまりよく表されているものであるから,「つつみ」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているということはできない。

とした上で、本件の事実関係のもとにおいては、

本件商標の構成中の「つつみ」の文字部分から地名,人名としての「堤」ないし堤人形の「堤」の観念が生じるとしても,本件審決当時,それを超えて,上記「つつみ」の文字部分が,本件指定商品の取引者や需要者に対し引用各商標の商標権者である被上告人が本件指定商品の出所である旨を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものであったということはできず,

更に、

本件商標の構成中の「おひなっこや」の文字部分については,これに接した全国の本件指定商品の取引者,需要者は,ひな人形ないしそれに関係する物品の製造,販売等を営む者を表す言葉と受け取るとしても,「ひな人形屋」を表すものとして一般に用いられている言葉ではないから,新たに造られた言葉として理解するのが通常であると考えられる。そうすると,上記部分は,土人形等に密接に関連する一般的,普遍的な文字であるとはいえず,自他商品を識別する機能がないということはできない。

とし、

このほか,本件商標について,その構成中の「つつみ」の文字部分を取り出して観察することを正当化するような事情を見いだすことはできないから,本件商標と引用各商標の類否を判断するに当たっては,その構成部分全体を対比するのが相当であり,本件商標の構成中の「つつみ」の文字部分だけを引用各商標と比較して本件商標と引用各商標の類否を判断することは許されないというべきである。

としております。そして、構成部分全体を対比するようにすると、

本件商標と引用各商標は,本件商標を構成する10文字中3文字において共通性を見いだし得るにすぎず,その外観,称呼において異なるものであることは明らかであるから,いずれの商標からも堤人形に関係するものという観念が生じ得るとしても,全体として類似する商標であるということはできない。

と結論づけております。

ちなみに、上では述べませんでしたが、無効審判の審決では、4条1項11号の該当性の判断において、

本件商標は、同じ書体で等間隔にまとまりよく表されており、これよりは「ツツミノオヒナッコヤ」の称呼、「堤焼(あるいは堤町)の土人形を扱う店」の観念が生ずるものというのが相当であり、視覚上においても、観念上においても、その構成中「つつみ」の文字部分のみに限定して称呼・観念が生ずるものとすべき格別の理由はない。

とされております。つまり、特許庁と最高裁においては、商標の構成部分全体を対比するようにしているのに対して、知財高裁においては、本件商標の冒頭部分「つつみ」を抽出して対比するようにしていることから、結論が異なってしまったことになります。

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2008年7月17日 (木)

特許異議申立における訂正請求に関する最高裁判決

こんにちは。弁理士の藤野です。

今日は、先日言い渡しがされた最高裁判決(平成20年07月10日 最高裁第一小法廷 平成19(行ヒ)318;pdfファイル)についてご紹介します。

本件は、上告人が有する特許第3441182号(本件特許)についての特許異議申立の審理中に、上告人が請求した特許請求の範囲の訂正(本件訂正)について、特許庁が、訂正要件違反であるとして訂正を認めなかったことが違法であるか否かが問題となった事案です。

より具体的には、本件訂正が、本件特許の4つの請求項を訂正するもの(請求項1を訂正する訂正事項a、請求項2を訂正する訂正事項b、請求項3を訂正する訂正事項c、請求項4を訂正する訂正事項dから成るもの)であったのに対して、特許庁が、請求項2の訂正(訂正事項b)について訂正要件違反である(特許請求の範囲を実質上拡張するものである等)と判断しただけで、他の請求項の訂正(訂正事項a、c、d)についてなんら判断することなく、訂正事項bを含む本件訂正全体を認めなかったことが問題とされました。

この点に関して、原審(平成18(行ケ)10314;pdfファイル)は、

願書に添付した明細書又は図面の記載を複数箇所にわたって訂正することを求める訂正審判の請求又は訂正請求において,その訂正が特許請求の範囲に実質的影響を及ぼすものである場合(すなわち訂正が単なる誤記の訂正であるような形式的なものでない場合)には,請求人において訂正(審判)請求書の訂正事項を補正する等して複数の訂正箇所のうち一部の箇所について訂正を求める趣旨を特定して明示しない限り,複数の訂正箇所の全部につき一体として訂正を許すか許さないかの審決又は決定をしなければならず,たとえ客観的には複数の訂正箇所のうちの一部が他の部分と技術的にみて一体不可分の関係になく,かつ,一部の訂正を許すことが請求人にとって実益のあるときであっても,その箇所についてのみ訂正を許す審決又は決定をすることはできないと解するのが相当である(前記最高裁昭和55年判決参照)。そしてこの理は,原告のいう改善多項制の下でも同様に妥当するというべきである。

と述べた上で、

訂正事項bが訂正の要件に適合しない以上,訂正事項a,c,dについて判断することなく,本件訂正を認めなかった本件審決に,訂正事項a,c,dに関する訂正要件の判断を遺漏した違法があるということはできない。

として、上告人の請求を棄却しました。

これに対しては、最高裁は、

特許異議申立事件の係属中に複数の請求項に係る訂正請求がされた場合,特許異議の申立てがされている請求項についての特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正については,訂正の対象となっている請求項ごとに個別にその許否を判断すべきであり,一部の請求項に係る訂正事項が訂正の要件に適合しないことのみを理由として,他の請求項に係る訂正事項を含む訂正の全部を認めないとすることは許されないというべきである。

と述べた上で、

上告人は,訂正事項aは特許請求の範囲の減縮を目的とする旨主張して,これを含む本件訂正の請求をしているところ,訂正事項aは,特許異議の申立てがされている請求項1に係る訂正であるから,他の請求項に係る訂正事項とは可分のものとして,個別にその許否を判断すべきものである。ところが,本件決定は,請求項2に係る訂正事項bが訂正の要件に適合しないことのみを理由として,請求項1に係る訂正事項aについて何ら検討することなく,訂正事項aを含む本件訂正の全部を認めないと判断したものである。これを前提として本件訂正前の特許請求の範囲の記載に基づいて特許発明の認定をし,請求項1に係る部分を含む本件特許を取り消した本件決定には,取り消されるべき瑕疵があり,この瑕疵を看過した原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

として、原判決のうち、本件特許の請求項1に係る特許の取消決定に関する部分を破棄し、本件特許の異議の決定のうち、本件特許の請求項1に係る特許を取り消した部分を取り消しております。

なお、傍論になるのかもしれませんが、訂正審判については、

訂正審判に関しては,特許法旧113条柱書き後段,特許法123条1項柱書き後段に相当するような請求項ごとに可分的な取扱いを定める明文の規定が存しない上,訂正審判請求は一種の新規出願としての実質を有すること(特許法126条5項,128条参照)にも照らすと,複数の請求項について訂正を求める訂正審判請求は,複数の請求項に係る特許出願の手続と同様,その全体を一体不可分のものとして取り扱うことが予定されているといえる。

と述べております。

ちなみに、特許異議申立制度は2003年をもって廃止されており、それ以前に申立てがされた事件も、2005年度中に全処理が完了しているとのことです。すなわち、本判決が直接影響する事案は既に存在しないということになります。但し、最高裁は、本判決中において、

特許法は,複数の請求項に係る特許ないし特許権の一体不可分の取扱いを貫徹することが不適当と考えられる一定の場合には,特に明文の規定をもって,請求項ごとに可分的な取扱いを認める旨の例外規定を置いており,特許法185条のみなし規定のほか,特許法旧113条柱書き後段が「二以上の請求項に係る特許については,請求項ごとに特許異議の申立てをすることができる。」と規定するのは,そのような例外規定の一つにほかならない(特許無効審判の請求について規定した特許法123条1項柱書き後段も同趣旨)。

と述べており、上記判断至った理由が、特許無効審判における訂正請求についても適用可能なことを示唆しているようにもみえますので、特許無効審判における訂正請求の実務に間接的に影響を及ぼすかもしれません。

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2008年6月20日 (金)

著作権法上の保護対象

こんにちは。弁理士の藤野です。昼に、本記事をアップしようとしたのですが(記事作成及び記事投稿には、ホームページビルダーを使ってます)、なぜか、アップする際に、作成した記事の大部分が消えてしまい(涙)、一部の記載のみがアップされることになってしまいました。昼にアップされた記事をご覧になった方には、意味不明な記事となってしまったことをお詫びします。

では、気を取り直して、今日二度目ですが(汗)、著作権法上の保護対象について書いてみます。

一般に、「著作権法は表現を保護するものであってアイデアを保護するものではない」などと言われます。

これは、具体的にはどういうことを言っているのでしょうか。

最近の裁判例(平成20年06月11日 東京地裁 平成19(ワ)31919;pdfファイル)では、「数霊占術」という占いの本の著作者(著作権者)である原告が、被告らが出版した「激数占い」の本が、原告の著作権(複製権、翻案権)を侵害すると主張して、著作権法112条に基づき当該書籍の販売等の差止め及び在庫品の廃棄等を求めたのに対して、裁判所は、まず、


著作権法は,思想又は感情の創作的な「表現」を保護するものである(著作権法2条1項1号)。したがって,既存の著作物に依拠して創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体ではない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,複製にも翻案にも当たらない(最高裁平成13年6月28日第一小法廷判決民集55巻4号837頁参照)。また,上記の複製にも翻案にも当たらない著作物は,同一性保持権を侵害するものでもない。


と述べた上で、原告が著作権侵害を主張している箇所は、いずれも、「アイデア」における同一性や、表現上の創作性のない部分での同一性を指摘するものにすぎない等として、原告の請求を棄却しました。

具体例をひとつ挙げると、原告が著作権侵害を主張する下記箇所

 原告書籍1

「生年数を出す時,一番大事な観点は,暦における節入で,入門初心者がかならずと言ってよいほど,間違いを起こすところですから,何回も繰り返して,ご記憶下さい。毎年の立春から翌年の節分までを一年として区分けします。立春は,平年は二月四日頃,閏年は二月五日頃が節入りとなります。従って一月生れ,二月節入り前に生れた場合は,前年で計算します。」


 被告書籍1の1

「ひとつだけ気をつけていただきたいのは,この占いは旧暦がベースになっているということ。ですので,一年間は,節分の2月3日までとなります。つまり,1月1日~2月3日までの間に生まれた方は,前年生まれになるのです。」


について、裁判所は、

 被告書籍1の1は,原告書籍1と表現において全く異なっていると認められ,複製権侵害,翻案権侵害,同一性保持権侵害のいずれにも当たらない。
 これに反する原告の主張は,「旧暦に従って,毎年の立春から翌年の節分までを1年として区分する」という「アイデア」における同一性を指摘するものにすぎず,到底採用することができない。


と述べております。裁判所の述べているように、上記箇所は、表現において全くと言っていいほど異なっており、上記箇所で著作権侵害を主張するには、かなり無理があったのではないかと思われます。

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2008年6月 4日 (水)

発明者は誰だ?!

こんにちは。弁理士の藤野です。

今日は、発明者について考えてみます。

発明者とは、単純に考えると、発明をした者ということになりますが、具体的には、どういうことをすれば発明者になれるのでしょうか。一人の発明者がすべてを一人でやり遂げたのであれば問題にはなりませんが、通常は、発明の完成までには、複数の者が関与することが多いので、誰が発明者であるかが問題になることがあります。

最近の裁判例(平成20年05月29日 知財高裁 平成19(ネ)10037)では、裁判所は、発明者について、次のように述べております。

発明とは,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度なものをいうと規定され(特許法2条1項),産業上利用することができる発明をした者は,・・・その発明について特許を受けることができると規定され(同法29条1項柱書き),また,発明は,その技術内容が,当該の技術分野における通常の知識を有する者が反復実施して目的とする技術効果を挙げることができる程度にまで具体的・客観的なものとして構成されたときに,完成したと解すべきであるとされている(最高裁昭和52年10月13日第一小法廷判決民集31巻6号805頁参照)。したがって,発明者とは,自然法則を利用した高度な技術的思想の創作に関与した者,すなわち,当該技術的思想を当業者が実施できる程度にまで具体的・客観的なものとして構成する創作活動に関与した者を指すというべきである。当該発明について,例えば,管理者として,部下の研究者に対して一般的管理をした者や,一般的な助言・指導を与えた者や,補助者として,研究者の指示に従い,単にデータをとりまとめた者又は実験を行った者や,発明者に資金を提供したり,設備利用の便宜を与えることにより,発明の完成を援助した者又は委託した者等は,発明者には当たらない。もとより,発明者となるためには,一人の者がすべての過程に関与することが必要なわけではなく,共同で関与することでも足りるというべきであるが,複数の者が共同発明者となるためには,課題を解決するための着想及びその具体化の過程において,一体的・連続的な協力関係の下に,それぞれが重要な貢献をなすことを要するというべきである。


そして、以上の点を踏まえて、裁判所は、発明者であると主張する原告は、

本願発明に至るまでの過程において,M(発明者の一人)から実験結果の報告を受けていたにとどまり,本願発明の有用性を見いだしたり,当業者が反復実施して技術効果を挙げることができる程度に具体的・客観的な構成を得ることに寄与したことはない。原告は,Mに対して,管理者として,一般的な助言・指導を与えたにすぎないので,本願発明の発明者であると認めることはできない。


として、原告を発明者として認定した原判決を取り消して、原告の請求を棄却しております。

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